実家の処分には多くの課題や障害があり、手間も時間もかかります。
売れない家にしないための方法や家の処分の方法など、親の死後に慌てるのではなく、親が元気なうちに考えておけることをいくつかご紹介したいと思います。
実家に一人で住んでいる80代の私の母が3年前、脳梗塞で入院し、今は元気ではあるものの、実家の処分はいずれは直面するであろう問題です。
親の死後に慌てて実家の処分をしようとしても、なかなか売れないのが現状です。
家の処分はどうするのか…。誰かが住むのか、売却するのかなど、親族で相談し考えなければならないことはたくさんあります。
売却するなら、売れない家にしないために今からできることなど、親の死後に慌てずに済む方法を一緒に考えていきましょう。
Contents
親の死後に家の処分をしたくても売れない理由と対策方法
親の死後、家の処分をしたくても売れない理由
実家の処分をしようとしてもなかなか売れないのには、いつくかの理由が考えられます。
- 立地
- 再建築不可物件
- 老朽化
- 相場より高い
理由その1:立地
大切なのは、住居として需要がある立地であるかどうかです。
駅やバス停からの距離
都心の場合は、最寄り駅まで徒歩10分以内であることが需要が高いでしょう。駅までバスを利用する場合は、家からバス停までの距離もポイントになってきますね。
また地方の場合は、市街地まで車で15分以内が1つの目安です。
日当たり
日当たりの悪い家や部屋は需要が低くなる傾向にあります。アパートやマンションのお部屋探しなども、日当たりは重要な決め手となりますよね。
周辺の施設
病院、学校、スーパーなど、生活する上で欠かせない施設が徒歩圏内にあることが需要が高くなります。
小さなお子さんのいる家庭では、公園などが近所にあることもポイントになりますね。
周辺の環境
交通量の多い幹線道路や線路の近くなどの騒音や、地域の治安が悪いことなども需要が低い理由になりがちです。
立地が理由の場合は、自身でできる対策がないことが歯がゆいですよね。
理由その2:再建築不可物件
現在の法律の基準に対し、土地が建築の条件を満たしていない物件のことをいいます。
このような土地は、更地にしたあと、新たに家を建てることができないので注意が必要です。
再建築不可物件についての記事はこちらをご覧ください↓
理由その3:老朽化
外観・内観共に老朽化が進んでいると思われる家屋は、売れない物件に匹敵します。
上記に紹介した『立地』や『再建築不可物件』は対策の施しようがないですが、老朽化は事前に防ぐことが可能です。
親の死後に慌てるのではなく、普段から壁のヒビや雨漏りなどに対し修繕するなど、管理をきちんとしておくことで老朽化は防げます。
親が元気なうちに、実家に帰った時には家の中や家の周辺を見て回り、対策を相談することも必要になってきますね。
定期的なメンテナンスを行うことは、資産価値を維持することになりますよ。
理由その4:相場より高い
設定価格が相場より高い場合は、家が売れない大きな理由の1つになります。
不動産の需要は時期により変動するので、仲介してくれる不動産会社のアドバイスを参考に適正価格を決めるのがよいでしょう。
親が元気なうちにできること
上記の理由により、親の死後に考えるのではなく、生前から考えておく必要があります。
- 処分するなら、どう処分するのか
- 相続するなら、誰が相続するのか
- 後見人を選んでおく
- 実家の価値の把握
- 維持費はどう捻出するのか(固定資産税・管理方法)
- 他財産の把握(農地など)
- 形見分けを行なっておく
- マンションの場合、管理費や修繕積立金の滞納がないか
財産の把握も大切なことですが、中には借金がある場合もあります。
その辺りもなるべく生前にクリアにしておいてもらうことで、親の死後、残された親族に迷惑がかからないようにしてほしいものです。
親の死後に実家の処分をどうするのか、子供だけでなく、親自身や親の兄弟姉妹など、親戚も含めて話し合う機会を設けましょう。
話し合いの結果を、遺言書など正式な形で残しておいてもらうことが望ましいですね。
親の死後での家の処分は相続放棄より売却
親の死後、家の処分をせず放置することのリスクについても知っておきましょう。
実家の処分を放置してはいけない理由
- 近所迷惑
- 防犯上の問題
- 倒壊の恐れ
- 特定空家に指定
近所迷惑
空き家は景観や衛生状況を悪化させます。管理されていない家屋や土地は急速に荒れるものです。
雑草や害虫発生でご近所に迷惑をかけることのないようにしたいですね。
防犯上の問題
不法投棄や不審火の誘発など、犯罪の拠点にされてしまう恐れがあります。
倒壊の恐れ
誰も住んでいない家屋は建物の劣化に気付きにくく、自然災害への対策も見逃しがちです。
特定空家に指定
『特定空家』とは、保安・衛生・景観、その他の観点から、今後も放置するのは危険であると行政に判断された家屋のこと。
一般的な戸建ての固定資産税は年間10〜12万円に対し、『特定空家』は6倍の数十万円になります。
相続放棄
親の死後に困る家の処分方法として、相続放棄を思い浮かべる人もいるかもしれません。
もし親の死後、住んでいたマンションを売却しようとしても、管理費や修繕積立金の滞納が発覚した場合、全て清算してからでないと売却ができないのです。
滞納金額が大きくて清算が難しいという場合には、相続放棄を選択するのがベストでしょう。
相続放棄の注意点
相続放棄をすると、他の資産もすべて放棄しなくてはなりません。相続放棄をしても、しばらくは実家の管理義務が残ります。
- 相続放棄の手続き
- 相続人全員が裁判所へ申し立て
- 弁護士や司法書士などの相続財産管理人を選任
- 相続財産が国のものになる
この4つの手続きがすべて終わるのにおよそ9ヶ月かかる見込みです。
また、相続放棄のための申立費用や管理費用にも、数十万円以上かかるといわれています。
実家の処分は相続放棄より売却がおすすめ
相続を放棄するとはいっても、大きな出費になることが分かりましたね。
では、売却やその他の利用方法について見ていきましょう。
- 売却
- 引き継ぐ
- 貸し出す
- 不動産会社に買取依頼
- 自治体に寄付
- 更地にする
売却
売却して現金化することで、親族間でもめる可能性を軽減できますね。
不動産会社に仲介を依頼しますが、老朽化、立地条件などにより買主が見つかりにくいケースもあります。
売却時期
家が売れやすい記事を狙って売りに出すことで、売れやすくなります。狙いめは12〜3月です。
お隣さんが意外なキーマン!?
お隣さんにも声をかけてみましょう。子供夫婦と同居したいとか、庭を広くしたいと思っているかもしれません。意外にあっさり売却が決まるかもしれませんね。
価格を下げる
家の処分をしたいのにどうしても売れない場合の対策として、2割ほど売却価格を下げることを検討するのはいかがでしょうか。
リフォームが必要なほど老朽化してしまった実家は、リフォームを考慮した価格の設定をすることで売れやすくなることもあります。
不動産会社選び
複数の不動産会社に売却を依頼することをおすすめしますよ。その中で信頼できる不動産会社を見つけましょう。
- 地元での経営が長い、地域密着の不動産会社
- マンションでも一戸建てでも、依頼したい売却物件と同じ条件の取り扱いが多い不動産会社
- 問い合わせなどをしたときの、担当者のレスポンスが早い
上記のポイントを参考に、不動産会社を選びましょう。
見学希望者はそこそこ来るのになかなか売れない
見学希望者は価格・立地はある程度、想定範囲として考えている場合が多いですよね。だから一度、実際に見てみようと思うのです。
傷んでいる所の修復やクリーニング、部屋の片付け、家具・家電の片付け、庭のお手入れなど、きれいにしておくことで好印象を与え、売れやすくもなります。
不動産会社に買取依頼
不動産仲介で売却することと比べると、買取価格が低くなる可能性もあります。
ですが、一般の住居として需要がなく、なかなか売れない実家でも買い取ってもらえるのは、メリットが大きいです。
リフォーム費用などの出費がない上、再販事業用として確実に買い取ってもらえるわけですからね。
引き継ぐ
親族の誰かが引き継いで実家に住む、または誰が管理するかを検討しましょう。
管理は相続人に任せられますが、遺産分割でもめる可能性がありますので、そうならないために十分な話し合いを行う必要があります。
貸し出す
とりあえず実家に住む人もおらず、「思い出の実家を、売却や処分することは避けたい」との意向が強いのであれば、誰かに貸して住んでもらうのもよいですね。
家賃収入を生み出しますので、そこから実家の維持費を捻出できます。
部屋が複数あるのであれば、シェアハウスとして貸し出すものよいでしょう。シェアスペースや民泊などにも有効活用できますね。
実際、集客や利益を上げられるかどうかは経営手腕による部分が大きいため、素人ではなかなか難しいところがあります。
サポートしてくれる管理会社と契約し、運営してもらうのも1つですね。
自治体に寄付
寄付制度に取り組んでいる地域は少ないようですが、空き家対策として寄付制度を設けている自治体があります。
実情として、寄付を受け付ける条件は厳しいようですよ。
更地にする
更地にして売れるかどうかの十分な検討も必要ではありますが、土地の購入をしたい人がいる場合には有効です。
また、コインパーキングとして運営するのもよいでしょう。駅近くや都心の住宅街では重宝されますね。
ただ、建物の解体にはまとまった費用がかかります。
親の死後に家の処分でかかる費用を状況別に解説
親の死後、実家の処分にかかる費用についても見てみましょう。
不動産会社に仲介してもらい売却する場合
売れない家の売却を不動産会社にお願いすると、仲介手数料がかかります。
取引物件価格(税抜) | 仲介手数料の条件 |
400万円超 | 取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税 |
200万円~400万円以下 | 取引物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税 |
200万円以下 | 取引物件価格(税抜)×5%+消費税 |
例えば、取引物件価格2,000万円で72万6,000円の仲介手数料がかかるのです。
不動産会社に仲介・買取、どちらでもかかる費用
印紙税 | 収入印紙税は売買契約書の作成時に課せられます 売却金額が、1,000万以上5,000万円以下だった場合の納税額は1万円 |
相続登記費用 | 納税額は固定資産税評価額の0.4% 相続登記の一連の手続きは手間と時間を要するため、司法書士に依頼するのが一般的 司法書士への報酬額は、およそ7~12万 |
また、必要書類の紛失などにより、再発行が必要な場合の費用は下記の通りですよ。
登記済権利証(登記識別情報) | 本人確認情報作成費用:3〜5万円程度 |
土地測量図面・境界確認書 | 測量費用:60〜80万円 |
固定資産税納付通知書 | 固定資産税評価証明書発行費用:400円程度 |
築確認済証・検査済証 | 建築物の確認等に関する台帳記載事項証明:400円 |
物件の間取り図、設備の仕様書 | 364円 |
修繕やリフォーム費用
水まわりや給湯器等の部分的な修繕であれば数十万円、家全体のリフォームであれば1,000万円ほどかかるでしょう。
売れない家を売れるようにしようと思うと、それなりに費用がかかりますね。
更地にする場合
木造 | 約3~6万/1坪 |
鉄骨造住宅 | 約3.5~7万円/1坪 |
例えば1F・2Fとも20坪の木造住宅の場合、120万〜240万円となります。
ここまでは親の死後に困る実家の処分方法を見てきました。
費用を最小限で抑える有効活用:空き家バンク
最初のほうで空き家にしておくリスクなどもご紹介してきましたが、現在は過去最高と言えるほどに空き家が増えており、社会問題にもなっています。
居住世帯の有無
総住宅数を居住世帯の有無別にみると,居住世帯のある住宅は 5361 万6千戸(総住宅数に
占める割合 85.9%),居住世帯のない住宅は 879 万1千戸(同 14.1%)となっている。
居住世帯のない住宅のうち,空き家は 848 万9千戸と,2013 年と比べ,29 万3千戸(3.6%)
増となっている。また,総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は 13.6%と,2013 年か
ら 0.1 ポイント上昇し,過去最高となっている。
空き家の内訳をみると,「賃貸用の住宅」が 432 万7千戸(総住宅数に占める割合 6.9%)
となっており,「売却用の住宅」が 29 万3千戸(同 0.5%),別荘などの「二次的住宅」が 38
万1千戸(同 0.6%),「その他の住宅」が 348 万7千戸(同 5.6%)となっている。
空き家の内訳について,2013 年と比べると,「賃貸用の住宅」が3万5千戸(0.8%)増,
「売却用の住宅」が1万5千戸(4.9%)減,「二次的住宅」が3万1千戸(7.5%)減,「その
他の住宅」が 30 万4千戸(9.5%)増となっている。空き家は 848 万9千戸と 3.6%の増加,空き家率は 13.6%と過去最高
出典:平成 30 年住宅・土地統計調査(総務省統計局)https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/kihon_gaiyou.pdf
(注)空き家の「その他の住宅」とは,「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」「二次的住宅」以外の空き家で,転勤・
入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅
のほか,空き家の区分の判断が困難な住宅などを含む。
では、ここからは親の死後の家の処分方法ではなく、空き家や売れない家を有効活用し、収入を得る方法をご紹介していきます。
その活用方法の1つとして、『空き家バンク』をご存知ですか?
空き家バンク:地域活性化のために各自治体が運営。売りたい人と買いたい人をつなぐ、空き家のマッチングサイト
メリット
営利目的ではないので登録自体は無料で、無駄な費用がかかりません。
古民家をDIYしたい人や、移住したい人などを集客できます。
デメリット
空き家バンク自体の知名度が低く利用者が少ないので、買い手が見つかりにくい傾向です。
自治体によって、空き家所有者が直接交渉する必要があります。契約に失敗してしまうと、損害やトラブルに見舞われる可能性もあるので注意が必要ですよ。
費用を抑えて収入を得る:賃貸物件として利用
実家を空き家にしておくのはもったいないです。まだ十分に利用価値のある家なら、貸し出してしまいましょう。
- 古民家カフェやパン屋さんなど、ショップを経営
- 移住希望者や外国人旅行者を対象とした民泊体験
- 自治体からの補助金の支給を受けての図書館などの文化施設運営、福祉施設としての運営
- シェアハウス・シェアスペースとして貸し出す
地方にはシェアハウスが少ないので、あっという間に入居者が決まってしまうほど人気が高いようです。
今はビジネスも多様化しています。他にもいろいろな利用方法があるはずです。あなたの実家を大事に有効に使ってくれる人を探してみましょう。
まとめ
- 親の死後に家の処分をしようとしたときに売れない理由は、立地、家の老朽化、設定価格などによる
- 親の死後に慌てるのではなく、親が元気なうちに親族で話し合い、実家の処分の方法などを遺言書に残しておく
- 売れないからと実家の処分を放置するのは、景観や衛生状況、不法投棄や不審火など犯罪の拠点になりやすくリスクが高い
- 親の死後に大きな借金が発覚したときを除き、相続放棄よりも売却のほうがメリットが大きい
- 不動産会社の仲介による売却には多額の仲介手数料がかかり、家の解体にも多額の費用がかかる
- 売れない家の処分は売却の他に、空き家バンク制度を利用したり、有効活用して家賃収入などを生み出すのもよい
こうやって見てみると、今から色々と考えたり準備したりする大切さが分かりますね。
実家の処分は大きな問題ですが、決して後回しにせず、できることから少しずつ手をつけていくのがよさそうです。
人の寿命なんて、いつどうなるか分かりませんからね。今のうちに少しずつ、大きな問題になる前に対処をしていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。